これが涙の出会いの後の漢詩です。

 能修様に、この他にも漢詩を数首作って、お渡ししましたが、残念ながらお言葉は有りませんでした。

 しかし大明寺の「鑑真学院の教授に成って下さい」と言う有り難いお言葉を、通訳から聞きました。

 ところがこれも、もう消えてしまいました。

 何が有ったのか、小生にはまったく判りません。

 しかし、鑑真和上は五度も渡航に失敗し、六度目の難事をやっと乗り越え日本に流れ着いた時には、目は見えなくなって居ました。

 この鑑真の決心に比べれば、小生等、とるに足らない戯言に過ぎません。

 この難事の漢詩も作りました。

題 可解鑑真大意  解すべし、鑑真の大意
 二十一人共     二十一人の共
 難航六度倫     難航六度の倫(みち)
 鑑真失明運     鑑真失明の運(運命)
 万事是何因     万事是何に因るところぞ。

 以上、この世の事ごとは、何もかも総てが絶妙であり、計り知れない因縁に満ち満ちています。 これを意識的に察知することは困難ですが、小生の
」の様に、涙が訳もなく溢れ出てきて 止まらない現象は、稀な事としても、これによく似た経験は、どなたにも有る事では無いでしょうか。

 私達の体内を流れる血は、今を生きる自分だけの物では有りません。

 血は生命誕生のその時から、一度も死ぬこと無く、私達の体内を今も躍動して、生きて居るのです。

 ですから、想像する事も出来ない長い時間を、血は生き続けて居るのです。

 貴方の命より、もっと遥かに遠来な「血」が、貴方の命に繋がっているのです。

 能修様に泣かされてしまう私は、もしかしたら、血が記憶する遠来な縁に、繋がっているのかも知れません。

 しかし、解りません。

 不思議だと、思うばかりです。

 これを、妙観察知と言うのでしょうか。

 現代を生きる私達は、小さな自分一人の単純な世界に閉じこもり、これだけが一切の世界だと思い込んで 生きて居るのでは有りませんか。本当に私達はそれだけの存在なのでしようか。

 私達は、もっともっと広い、時間も空間も飛び越えた、甚大な大意の中に生きている、正体不明の存在ではないでしょうか。

 宇宙は百三十七億年前に、突然大爆発が起こり、誕生したと言われています。

 ならば、大爆発が起こる前は、何が有ったのでしょう。

 何にも無かったのだそうです。

 そんな馬鹿な事が有りますか、有る訳が無いでしょう。

 でも、やはり、何にも無かったのだそうです。

 この程度の物が、現代の科学です。

 もう少しで、宇宙の一切が解明出来るそうです。

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