アトリエプランギ シルクオーガンジ 衝立 梵字 タペストリー 透紋布 展覧会 教室

コラム

VOL、2

「早起き」と「歩く」ということ (1)

2005年11月17日

 日本は寒暖の差が激しい上に、地震や台風の自然災害が多い国だからこそ世界一流の 民族になれたと民俗学の見地から指摘されています。この国にあって、人は自然災害の前 ではなすすべも無く、ただただ耐え忍ぶ事しか出来なかった。
そこから我慢強さや粘り強さが養われ、それらに打ち勝つための知恵と相互扶助の精神が 必要だった。生きるための力を大自然が与えてくれたのだと思うと、それらを前向きに捉えて プラス思考で楽しめるようにしないといけないのでしょう。

 今夏の暑さを避けるために朝型にシフトしてから、早朝のウォーキングとジョギングが続い ています。週2〜3回ですが5〜6時に起きて、8キロほどを前半は歩き後半を走ります。その 日の気分でコースも変わります。すれ違う人にアイサツするのが楽しく、最近は少しずつリア クションが良くなってきたような気がする。朝は皆機嫌が悪く、ほとんどの人がブスッとした顔 のままで、アイサツし合う姿をあまり見る事も無かったが、最近では向こうからアイサツしてく れるようになってきた。

 朝型にシフトしてから自分の内面に少しずつ変化が現れてきた気がします。人に会うのが 楽しい自分がいます。幸せホルモンのβエンドルフィンは早朝に一番多く分泌されるのだそ うです。今、各界で活躍されている人々の多くは早起きです。早朝会議や早朝の講演会など も行われているようです。それは早起きが人間の能力を一番発揮できるという自然の成り行 きから始まった動きであり、効果が認められている証明でもあります。

 これからの社会は早起きがテーマになると思います。
「早起きできない人は人間じゃない」これはいい過ぎですが、「歩くこと」とセットでいづれ社会 で大きな運動となっていくでしょう。余りにも人間本来の姿から遠ざかっている現代の生活に 疑問をもっている人が沢山います。
 高齢化社会を迎えて最も重要な問題は健康です。体の健康はもちろんのこと、精神の健康 も同等に大切なものです。肉体的・精神的な健康を維持するために、誰にでもできてお金も掛 からず最も身近にある健康法は「歩くこと」です。「早朝に歩く」というのは、病んだ現代人が活 力のある真の人間性を取り戻す最もいい方法です。

 いわれて久しい人間回帰の必要性を、嫌でも実感できるのが地震や台風の自然災害です。
自然の猛威に人間はまったくなすすべも無く太刀打ちできない。その時初めて人間も自然の 一部にしか過ぎず、自然と一体となって生きていくしかないんだと思い知らされます。
 そんな時に歩くという基礎的な運動によって養われた体力が、かなりの忍耐力と粘りを発揮 する事が出来るでしょう。
 野生を取り戻し人間としての感性を磨けるのは、「早起き」と自然の中を「歩く」ことに尽きる と思まいす。金もかからず慣れてしまえば何の努力もいらない。必要なのはこれが生活の一 部となって継続される事だけなのです。




VOL、1

日本の住空間における間仕切りの意味について (1)

2月23日

 日本の住空間は壁のない横軸を中心とした空間です。それに対して欧米では、壁で仕切った縦軸の 空間が主です。各部屋に壁があり、壁によって空間が成立しています。 その為、壁を装飾することが重要な要素となりタペストリーや絵画が発達しました。
 日本では、夏の蒸し暑さをいかにすごすかに重点が置かれ、風通しのいいように空間が作られています。 そのため壁が少なく解放的な構造で、横への広がりを中心とした横軸の空間となっています。 襖や障子で区切られただけの部屋は、プライバシーが保てず室内の様子が外へ漏れてし まいます。不思議なほどにそういう状況の生活を日本人は長い間営んできました。
 襖や障子のような仕切りでも、プライバシーを守って生活できたということはいかに他を思い図るとい う協調の精神が生きていたかということに他ならない。

 このような生活習慣も、個性が重んじられるようになった現代社会では通用しなくなってきて おり、欧米のような壁で仕切られた個室を重んじる傾向が進んでいます。しかし永い年月の中で培 われた空間意識は簡単に変わるものではありません。欧米のように広くはない住宅事情ということも あって、壁に囲まれた狭い空間には何か違和感を感じたりすることがあります。
 広い和室の襖を開け放って座敷が連なっている様を観たとき、何かホットして安らぎと安心感を抱いた ことが有るのではないでしょうか。
 しかし、ただ広いだけの空間はかえって落ち着かないものです。精神的拠りどころがなく裸でいるよう な不安な気持ちを抱かせます。必要なところに最小限の仕切りを設けることで部屋を落ち着かせ、 居心地のいい空間にすることができます。

 完全に壁で仕切るのではなく、空間の中に一部だけ移動可能なもので仕切りを作るという 方法が有ります。衝立は昔から玄関などに置いて、入り口から奥への目線を遮るためと、結界としての 役割を持っていました。現代においても衝立をうまく利用することで空間に変化とアクセントを付けることが出来、 ちょっとした目線の遮りにも利用できます。
 完全に目隠しにしてしまわないことで重さや圧迫を感じないようにすることが大切です。


日本の住空間における間仕切りの意味について (2)

4月1日

 透ける素材によって仕切られた空間は、何もない空け透けの空間よりも遥かに密度が濃い。 全てが見えてしまう空間は広々として気持ちがいい反面、どこかよそよそしい心持がする。
 全てが見えてしまうということは、そこにはそれ以上のものが存在せず、見た目のものの存在 ただそれだけでしかないということ。
そのただの空間に透けるほどの薄い布が一枚掛かっていたらどうでしょう。
不思議なことにその空間は何もなかった時よりもかえって広がりを感じるようになります。

 これはほんの少しでも視野が遮られることによって、その向こう側をより知ろうとする意識が 生まれるからです。
 まったく向こう側が見えないところでは感じないことが、少しだけ見せられることでかえって興 味をそそられる。チラリズムにも通じることが、空間を仕切る場合にも生かされます。
子供の頃にすだれ越しに見た景色や蚊帳を透かして見る情景は、なんとなくワクワクするよう な不思議なイメージがありました。

 日本の住空間では、仕切りは昔から精神的なものとして存在してきた。障子にしても暖簾や 簾にしてもそういう意味合いのものでした。
そんな日本の住空間において透ける布で仕切るということは、その精神的な仕切りの意味で の最たるものであるとも言える。
 欧米に比べてあまり広いとはいえない空間を、半透けの布を使うことで広く見せる工夫をした らいかがでしょうか。
これから夏に向かって涼しさを演出するにはもってこいです。シルクオーガンジーやシホンの ような軽くて薄い布を垂らすと、ほんのわずかな風でゆらめいて風を感じることが出来ます。 風を目で感じるという感性は日本人の美意識の一つだと思います。


日本の住空間における部分照明について

8月28日

 日本では何故部分照明が普及しないのでしょうか。
天井に設置した蛍光灯で部屋の隅々まで照らすのが、一般的な家庭の照明方法になってい ます。あたかも薄暗い事を嫌うがごとく煌々と照らします。

 戦後、裸電球の薄暗い明かりの下で貧しいながらも明日(明るい日)を夢見て皆頑張って生 きてきました。
そんなある時、蛍光灯というまるで昼間のように明るい照明が登場しました。明るくて心まで ハッピーにしてくれました。明日の生活全てを約束してくれそうな、そんな魅力的なものに人々 は魂を奪われてしまったのです。明るい事はいいことで、薄暗い事は貧乏くさいというイメージ がこの時確定したのだと思います。

 それから随分年月も経ち、そこそこ裕福になったはずの日本人の生活の中で一番遅れてい るのが住宅です。
 その中でも照明については、伝統がなくロウソクや行灯からランプへ、そして裸電球を経てい きなり蛍光灯による全体照明という極端で単純な歴史しかない。照明の文化というものがま ったく発展してこなかった。

 ここで部分照明について少し考えてみましょう。
少し前に南アルプスに登って山小屋に泊まったことがある。食事の時だけは発電機で少し明 るい照明がついていたが、それ以外はランプの灯りだけ。炬燵に入って同宿の人達と話をす るのだけれどランプの灯かりはとても暗い。向かい側の人の顔がやっと見える程度。
しかしその空間の密度は濃かった。他には何も見えるものがなく、そこで話している人の存在 だけがクローズアップされて嫌でも心が一つになっていく。その場の空気を共有しているという 雰囲気が自然に生まれる。
囲炉裏にしても同じことで、周りが暗いがゆえに「その場」に心が集まって一体感が生まれます。

 こんな風に周りが暗い方が一体感が生まれ、余分なものが見えないために落ち着いた雰囲気 を作り出してくれるのは確かです。
もし明るい部屋が居間だけしかなかったら、家族は自然にそこに集まってきます。逆にどの部 屋も明るすぎるほどに照らされていたら気持ちは分散してしまい、密度の濃い空間は生まれよ うがありません。
また、読書をするのに部屋全体を明るくして本を読むより、自分の手元だけを照らして周りを 暗くした方がより本に集中できることも確かです。

 この様に部分照明は、落ち着きと集中する意識を演出してくれます。必要な場所のみに灯か りを点け、それ以外は思い切って照度を落としてみると、今までとは違ったイメージの部屋に 生まれ変わるでしょう。間接照明などで壁や天井にライトを当てるのも奥行きのある空間とな って面白いと思います。
和風の空間で部分照明するのに適当なものがないのが現状ですが、洋風化が進んだ今はフ ロアスタンドやクリップライトを工夫してみるのもいいでしょう。たまにはローソクだけで音楽を 聴くのもいいかもしれません。

 暗い空間を恐れない事です。暗さの中に情緒があるのです。
「陰影礼賛」谷崎潤一郎 著 が参考になるかもしれません。

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