★ お陰さまで「百首」が決まりました。

ご協力いただいた方、本当に有難うございました。

タイトルを「ジグソーパズル」と名付けました。


貴方のお気に入りの短歌を選んで頂けませんか?

「日歌千首」より ─ 自選三百首

 

1、        長雨の途切れてのぞく青空や目にも肌にも痛くせつなく

2、        偏屈と呼ばれて心当たりなし種に毒持つエゴの花咲く

3、        三十年を越えきし夢のアパートのマンモスなればなお淋しけり

4、        壁の中抜けきしごとき老婆ひとり杖を鳴らして近づきにけり

5、        しののめの雨の上がりてみどりなるパークロードは卯の花重ね

6、        万感の死闘のあとのPKを外さしめたる悪魔の遊戯

7、        西表のひと夜かぎりの「さがりばな」水面にありて散華(さんげ)のごとし

8、        雲晴れて槍さす日差し屋根うえに焼かれて死するカマキリの子よ

9、        数多なる小さきものを幸せは集めてつなぐジグソーパズル

10、     気の抜けたビ−ルとなりし遠花火(とおはなび)おくれし音のたよりなきなり

11、     暮れなずむ空に浮かびてふわふわと春をなごりて心ただよふ

12、     災害の数多なるこの国に生き耐えて忍びる民となりたり

13、     セミ鳴きて朝の光の満ち来たり猛暑の予感ニガウリの花

14、     うろうろと猫の居場所の定まらずとろけてしまいそうな猛暑日

15、     ナンパにも色いろありて夏の夜のこれはこれにてウシガエル鳴く

16、     自ずからアートとなりてセミの羽化見事な変身神秘の儀式

17、     横向いて笑っているよな上弦の月にずう〜っと見られています

18、     うっかりとこぼれて出でし言の葉の二度と戻らぬ放蕩息子

19、     夕ぐれてセミ時雨にも影おびてノウゼンカズラの花一つ落つ

20、     命なる手足もがれて所作のなし咲いて一輪なごやあさがを

21、     人気(ひとけ)なき道に横たふ亡がらのセミよ命を全うしたか

22、     水平に朝の光の差してきて「おはようさん」と言ってるような

23、     空港へいそぐ列車の銀いろの帯すぎ去りてあきあかね翔ぶ

24、     水中で獲物を追っておよぐ鵜のずるいと思う鳥のくせして

25、     あの月の赤く輝くそのわけは地球の怒りを照り返すから

26、     老いねこの足の先まで毛づくろう夏の終りのすろーもーしょん

27、     木漏れ日の下で笑っているような顔がゆれてるお見合いシート

28、     知らぬまに空家となりぬ虫すだく庭に残りし赤き鞦韆(ふらここ)

29、     テレビとは虚像をうつす玉手箱故障して知る邯鄲(かんたん)の声

30、     カーテンの陰からそっとのぞき見る少女に性(さが)を見抜かれていし

31、     棟梁のぼうずあたまのさびしかる 黄蜀葵(とろろあおい)の花とじるころ

32、     ひさかたの光あつめて露草のいだきしつゆに明日が見えなむ

33、     きみどりの稲穂の海をかすめとぶコサギはゆる〜く左旋回

34、     カラオケは蕎麦に入りたる小麦粉の老若男女を寄せてつながむ

35、     人工の浜に立ちたる風車 南の風の吹いているらむ

36、     黄金なる稲穂の海は夕焼けて黒き小旗のはためいており

37、     天高し野茂のフォークの赤い日がストンと落ちて秋刀魚が匂う

38、     白芙蓉プチ教会に夕ぐれて赤き十字にネオン灯れり

39、     をちこちでりりりりりりと鳴く虫は耳介の中に住む草雲雀

40、     秋風や博識の中に虚言あり紫色に夕暮れてゆく

41、     列島のへそで泳ぎし鯱ほこを従え竜が舞い上がるなり

42、     至らぬを恥じ入るのみの齢なり懺悔の値打ちも無くて夕ぐれ

43、     座るなり化粧を始む中年(ひと)のあり色あせながら咲く曼珠沙華

44、     90度ピアノの向きを変えてみる寒露の風を招き入れむと

45、     両耳に補聴器付けし老人のラジオのごとくしゃべり続けり

46、     (わ)の前に獲物見つけしトビの来て急降下せり海岸道路

47、     入り口に夏つばき立つギャラリーの二階で語るIT格差

48、     シャーレーで神経細胞飼育せる脳科学者のイノセントな夜

49、     街灯のよこを通りてとつぜんに影追い越せり沈思の道で

50、     コルチカムの白き花咲き記憶なき母はほどなく卒寿となりぬ

51、     なりわいの成すべきことのおろそかに秋の夕日の秒速で落つ

52、     (わ)が問いに見上げしネコの泉なるひとみの奥にすみし憧憬

53、     夕明りヒラリフラリと蝙蝠の行き惑いいて夜となりたり

54、     それぞれの色を見せたりカラオケのVIPルームに柔・剛・哀・楽

55、     可視光は色の環となる不可思議や波長の示すオクターブの差

56、      マンションに行くて阻まれ抗いてビュルービュルルと風唸りたり

57、      海馬なる記憶の神のいたずらに卒寿の母は乙女となりぬ

58、      暁の三日月照らすホリゾント舞台は回りて満天の青

59、      洛北のカフェに流るるファドの曲オカメインコのフ〜ちゃんと聴く

60、      枝先を紅に染むもみじ葉の染め師の仕事まだ途中なり

61、      数羽づつ向きを違えてトビの群れ数多の雲の不穏な空に

62、      遊びたる同音異義語類義語と隠語雅語韻を踏み踏み

63、      落日や言葉を持ちし霊長の心が読めぬ生き物となり

64、      数本の松から出ずる黒き鳥小山の空に乱舞始めり

65、      恋人へ落ち葉5枚のエアメール エトランゼなるプチ・パリの夜

66、      新聞紙敷く拭く詰める包む貼る今は読むしか用のないもの

67、      近頃はオムニもせざる自家製のキムチを少し辛めに仕込む

68、      吾をして一匹狼と人の言うはぐれしままの一匹羊を

69、      大寒のそら動かざりモノクロの薄き影さえなき木立原

70、      光陰のたちまち過ぎて急行の先頭で見る景色のごとく

71、      西風に向かいて登る坂道の向こうに極楽茜空あり

72、      ひと筋の飛行機雲の拡がリてやるべきことのやれぬ吾あり

73、      描かざるものこそ見えむ空白の余韻に潜む不思議なるもの

74、      百年を生き延びて来し二尺余の松の見て来し人といふもの

75、      何にでもおの字を付ける歯科助手の「お風当てます」に歯が浮く気分

76、      大クシャミ連続技が炸裂す妻に鼻炎の春来たるらむ

77、      新作の梵字並べて眺むれば友より届きしインドのCD

78、      群れてなを奪い合いたるムクドリの熟れ始めたる柿の実ひとつ

79、      つくづくと「米」に依存すこの国の食も政治も危うかりけり

80、      カタカナで表記されたる人の名の顔見えざりし人格はどこへ

81、      満作も菜の花も蒲公英も春の野原はまず黄色から

82、      裏側の鬼の力に引き負けて赤い夕日が沈み行くなり

83、      この国を子育ての地に選び来て枝垂れ桜に初つばめ飛ぶ

84、      夜の更けて花盗人になりにけり一人で酌まむ薩摩焼酎

85、      足先で水草の根を小刻みにゆすりゆすりてコサギの夕餉

86、      真夜中に鳴る春雷のゆったりと低く響ける伊勢湾の奥

87、      清明や黄砂も止みし青空に白き花びら散り初めるなり

88、      あいさつの未だ返らぬ人のいて朝のしじまにたちつぼすみれ

89、      今日の日は初めて迎う今日ならむ見知らぬ朝の未知の始まり

90、      山笑う芽吹きの色のとりどりに初化粧する乙女のように

91、      計らずも波長の合えばまた会いて気連なき人欲なき店で

92、      一斉に原色の群れ吐き出され駅舎に溢る若きエナジー

93、      気に食わぬ何がありてか二羽のケリ鴉追いたて夏立ちにけり

94、      歌詠みて日々の暮らしの折々に付箋をつけて記しておかむ

95、      夕空に飛ぶ蝙蝠や点滅のブラックライトに照らさるごとく

96、      悠然と暮れ行く富士に湖(うみ)光り底冷えてゆくカメラの放列

97、      萌えいずる五湖をめぐりて懐に抱かれてゆく富士の夕暮れ

98、      握る手にわずかに応える母の手の意外に太し 筍の旬

99、      銀色のしっぽを立ててそれぞれにかってに揺れる茅(ちがや)の穂ばな

100、    小綬鶏の呼んでる声が響いててだーれも居ない里の裏山

101、    孤をまとい人を殺める短絡の思考の峰に思い及ばず

102、    カマキリや十ミリの子ら散らばりて板塀の上駆けてゆくなり

103、    ぶら下がる青大将の太き腹にツバメの雛のコブ四つあり

104、    失明の危機をはらみて三日間心のありか定まらぬまま

105、    不運だけは続かざるなり良きことも起こるはずとて宝くじ買う

106、    午前午後の二時間づつのうつ伏せを耐えて忍んで日が暮れてゆく

107、    大樽に水の満ちたるごときなる何んにもしない満ちたりし午後

108、    水無月の気まぐれ雨の暴れたり雹落雷のおまけまであり

109、    退職し学び再び次男坊急に背丈の伸びて六月

110、    あれほどに五月蝿く思う鳴き声の聞けずとなれば淋しきカエル

111、    これでもかこれでもかと降る雨の地球を洗うシャワーのごとし

112、    父の日に不意を突かれしプレゼント無口な二人の息子よりあり

113、    夜遅く食事を摂りし子の横で水割りそっと呑む三杯目

114、    堅物も阿川佐和子の直截の無意識過剰の話術にはまる

115、    白壁のまぶしく返す半夏生北の窓辺に麻布を掛く

116、    心経の間合いの合わぬ忌明けなり形ばかりの法要終えむ

117、    「良い医者がいないんです」と眼科医の待ちくたびれし吾に嘆きぬ

118、    学校の裏手にもはや杜のなく無国籍なる家立ち並ぶらむ

119、    足元で鳴きつる螻蛄(けら)の声ひびき芸なき声の哀れなるかな

120、    銀色に機体光らせジェット機の止まったような台風一過

121、    斜向きでスキップしながら逃げていくいたずらっ子のハシブトカラス

122、    偉そうにしてる奴らも同類のほぼ7割が水の生きもの

123、    便利とは何か失う事なりきいまだケイタイ持たずに生きる

124、    あかね色に暮れゆく空に浮かびたる雲になりたし流れるままに

125、    もの言えばくちびる寒し続投のテレビ画面に虚無の風立つ

126、    久々の破顔一笑暑気払い冷酒回りて美女溶解す

127、    幼子に歌う童謡ララバイのセミ時雨降るこのハイヌーン

128、    グランドに獲物を狙うチ−ターの腰をかがめてにらむ白球

129、    筋書きのなきオムニバスドラマ見せ入道雲の湧き立つシアター

130、    偏執の悪しきクセ持つ生き物の生み出すものをアートと呼ばむ

131、    耳鳴りと思い違いて朝まだき遠くに蝉の鳴き声つづく

132、    久方の雲のかげりて初鳴きの人心地なりツクツクボーシ

133、    夕立の降りて轟く雷鳴に肺魚の如く生き返るなり

134、    炎天に熱きシャワーを浴びぬれば溶け出してゆくミトコンドリア

135、    夏枯れや閉鎖のニュース猛暑日に馬も罹りしインフルエンザ

136、    不条理の風吹き続く今生にすずめは今日もさえずり止めず

137、    やることをやっているかとキジバトの低く鳴きたり目覚めし朝に

138、    くず切りの黒みつ光りぬばたまの夜は開きてコオロギの鳴く

139、    あからさまに費用を告げる法要のお経を読む背のありがたくもなし

140、    照明にショウリョウバッタ飛び立ちて緑の影のスローモーション

141、    ひっそりとネコ横たわり長月の廊下で風を聞いているらん

142、    里山の青き自生のアサガオは吾(わ)に来歴を問い掛けて来む

143、    人間の食するものを人工の機械が奪う文明の罠

144、    さざなみが緑の影を消してゆくはや夕映えてだ〜れもいない

145、    9時半に命を終えし朝顔の後は頼むと言ってるような

146、    何処にあるエキゾーストを轟かせ夜通し巡るヤツの魂

147、    言われなき嫌疑を受けて身の置き場なくして籠る北の仕事場

148、    不機嫌にテレビを観てる子の顔に男の影の見え隠れせむ

149、    しののめの右脳の奥に甘味なるゆうべのゆめが棲みついている

150、    むしゃむしゃと一心不乱に芋虫の変態前の夢見る時間

151、    夕映えのアオサギ息う黒廻間池(くろばさ)の水面にぽかりカワウ浮上す

152、    黄金なる瑞穂の国の夕まぐれ真白き鳥のゆるりゆるりと

153、    このままを保てと思わばいつの間に入り込みたる煩悩の影

154、    無いだけでなぜこんなにも恐ろしい汗避けなんて思えぬ眉毛

155、    ぼってりと血を吸い飛べぬ蚊ぞ哀れシーツに赤い汚点に沈む

156、    嫌いなど言う余地なくて好物は美味いものとふ団塊世代

157、    ひとり居のしだれ萩散る夕暮れに三味線の音のほろりほろりと

158、    妙音を漂わせつつ観世音菩薩が前を歩いてゆきぬ

159、    佐布里(そうり)みちの峠(たお)越え行かば見晴るかす鈴鹿の山に日の落ちゆかん

160、    隣国の五点一線計画の囲碁の国にて連珠を思う

161、    小春日にモンキチョウ舞い狂い咲くサクラもありて冬まだ遠し

162、    あるがまま信じるままに生きゆかむ薄紫にジャカランダ咲く

163、    伝統のついて行けざる変転の時代が人を追い越してゆく

164、    喪中にて書かぬ年賀や枇杷の花淋しくもあり気楽でもあり

165、    手ずからの洗顔洗髪許されて無事帰還せり普通の自分

166、    本能の一つを先ずは手に入れむ自ら充電しに行くロボット

167、    送れども音沙汰無しのEメール虚空の中に消えゆく思い

168、    雑踏に紛れしままに夕暮れて都会が我を侵蝕しゆく

169、    氷雨降る冬至の夜の明けあぐみ一番列車がはや上りゆく

170、    抽斗に喜怒哀楽の種ありて明日はどの花咲かせましょうか

171、    文明に首まで浸かりこの星の未来を憂ふテレビというもの

172、    宇治橋を朝霜踏みて渡るれば千古の杜に神ぞ待つらむ

173、    子の席を吾に譲らすオムニあり中部空港発名古屋行き

174、    庁舎には自動給餌の装置あり黒サギ群れて闇に蠢く

175、    白梅や遠めに枝の明らめき二月三日の公園は雨

176、    みな起きてもぐる布団のなかりせば寒きに惑う冬の老いネコ

177、    逆光を受けてたたずむ銀幕のスターのごとく冬欅立つ

178、    地元紙になじめず今日も勧誘を断る妻の妙な言い訳

179、    大陸も黄色に空の満ちるらん梅咲く里に霾(つちふる)の風

180、    明け空を北へ渡りてゆく鳥のゆるりと列の乱る時あり

181、    木版の髪一本を彫分ける神の手を生む江戸とふ奇跡

182、    人間も交尾をすると知りし日のわれ中1の杳き(とおき)悲しみ

183、    どん底を知りて心の読めたれば黙して交わすアイコンタクト

184、    落日に突っ込んでゆくジェット機の真紅に燃える雲に消えゆく

185、    ねむらざる冬のいのちの営みに秘めたる紅を咲かせむさくら

186、    突然に色湧き出でて山の端の光り満たるさくら花かな

187、    黒人の演歌を歌うミュータント サビは早口ラップのリズム

188、    先方の折れて来るなり音もなく不意にくずれし木蓮の花

189、    うつつにも夢にも散りてさくら花わかれを告げる雨降りにけり

190、    み吉野の苔むす幹やいにしえの空を染めなむやまざくら花

191、    み吉野の今を競いて十重二十重散り行く時も華と舞うらむ

192、    春の陽を集めて萌える連翹の花咲く道をランドセルゆく

193、    筍の伸びゆくごとく春過ぎぬコジュケイ鳴いて夏日となりぬ

194、    置き忘れ無人の部屋で宇宙から呼んでるごとく携帯の鳴り

195、    朝まだきはや襲い来るモスキート温暖化なる影の悩まし

196、    あかねさす真昼に咲けるつきみぐさ咲きて待たれよこの望(もちづき)の月

197、    高速で遠ざかり行く線路道 過去とふ穴に吸い込まれゆく

198、    突然にビビアン・リーの現れりスカーレットの薔薇咲く夕べ

199、    天は人をいらぬと言わむ天災に人累々と死なしめるなり

200、    おおらかに昭和を生きた母に似て泰山木の白き花咲く

201、    田にはケリ空にカワウの飛びゆきて今日始まれり里山の五時

202、    報道とふ餌を喰らいし情報の夜ごと夜ごとに増殖しゆく

203、    早苗萌えつばくろ立ちて初夏の新装うなぎ屋萌葱ののれん

204、    星出氏の宇宙(そら)に浮かびしサテライトきぼうを運ぶ星になりたり

205、    生き延びて生き延びてきて美しき調和を見せむ雑草の園

206、    漆黒の闇消え去りてあらわなる鏡の中の孤独なる影

207、    夕暮れの坂を登りしその刹那 運命線のふと気になり出して

208、    高きから低きに流ることわりに沿わず流るる金というもの

209、    あの花があのイガイガの実とならむ変態のごとき栗の花咲く

210、    逆しまに緋色あやしきタキンギョの昭和なつかしジンタのひびき

211、    朝凪のしじまに目覚む合歓の木や夢をなごりの花と咲くらむ

212、  しののめの雲の流れに月ありて灯台のごとく明滅すなり

213、  さわさわと春呼ぶ雨の誘いいてヒトデカズラに打たす行水

214、  今日もまた頭を垂るる放漫の社長と呼ばる裸の王様

215、  真夜中に目覚めて闇のしじまなる春やニンフのロンドカプリチオーソ

216、  忽然と消えて更地になりゆきて記憶をたどる手掛かりもなく

217、  花びらのコロコロコロと足元を風に曳かれて竜の行進

218、  空港へ向かう電車の味気なし線路の継ぎ目の音懐かしき

219、  梅雨空に地底を抜けてジェット機の離陸するらむ重き音させ

220、  葦原にジャッジャギシギシギシギシとオオヨシキリが吾を嚇せり

221、  これまでの吾の来し方をボソボソと酒を酌みつつ息子(こ)に語りかく

222、  しののめの篠つく雨と雷鳴に目覚めて外すパソコンケーブル

223、  あさぼらけ人をちこちにうごめきて粛々と犬連れゆきぬ

224、  首だけが近づいて来し公園のアカミミガメはおこぼれ目当て

225、  誰彼とうらみつらみを嘆きつつ暑さに倦みし九月が過ぎゆ

226、  ほの青き光に顔の浮かびいて暗がりに見る携帯画面

227、  中天に月青くして秋深し秋刀魚の腸(はら)に舌鼓うつ

228、  年一度古き仲間に会いにゆく県美術館8階J室

229、  名を呼ばれ返事をせざる人多しアノニマスなる生たらしめむ

230、  キッチンに来る人ごとにすり寄りて駄目もとで鳴くギンの食欲

231、  ツンドラは溶けて小象の現れり子を持ち得ざる若きカップル

232、  うなされていたやも知れぬ今朝の夢 目覚めればまた甦えきたり

233、  春の庭ひねもすナンパの声聞こえいっそ猫たれ恋せぬ若者(ひと)よ

234、  行く先のそれぞれなりて鳥たちのてんでに向いて飛ぶ春の空

235、  夢の中に舞う花びらのうつつにも霞みて散らむみ吉野の山

236、  濃密な時を過ごして燕(つばくろ)の子育て二十日芍薬の花

237、  突然に灯り点りて路地裏に立ちはだかりし黒き吾の影

238、  貧乏や金なし暇あり自由ありマジックアワーのこのジャズタイム

239、  たわわなる黄金悲しや枇杷の実にムクドリ群れて一番電車

240、  猫ほどに素直に愛を伝え得ず五月雨降りて遠回り道

241、  梅雨晴れて物憂いままに夕まぐれ饒舌になる吾も草木も

242、  主役なるはほんの一部に過ぎずして君よ生きろよ我が道なるを

243、  今宵また悲鳴の上がるゴキブリの出でて哀しい3億年ぞ

244、  真夜中にひとり目覚めて大宇宙の真っ暗闇に半跏趺坐せむ

245、  まん丸い紙ふうせんの朝の月浮かんだままに消えてゆくなり

246、  夕暮れて変則編隊むく鳥の急降下せり今宵のねぐら

247、  お礼にと木通(あけび)をそっと差し出すはうす紫の老いらくの恋

248、  翠なる姿焼き付く眼うらに飛ぶ翡翠(かわせみ)の夢幻幻想

249、  人生の先は長いと息子(こ)に言いて残り3割われ色づきぬ

250、  金色で地上に描く散らし紋 絵師は銀杏の老いたマジシャン

251、  病院のベッドに寝れば一晩で心身ともに病人となる

252、  薄切りの食パン二枚重ねたる「空気サンド」いう名の朝食

253、  早朝にケリ集まりて鳴き合えり 会議それとも集団見合い?

254、  半日を無駄にしたとは思わざり検査結果の出し13時

255、  真っ白な南天の花まき散らし朝青竜の黒き蜂翔ぶ

256、  芳しきバナナのごとき分身のゆるりゆっくり流れゆく朝

257、  鬱蒼の森から蒼の字の消えてジャングルは今鬱となりゆく

258、  真夜中に忍び寄りくるモスキート羽音なければ許せしものを

259、  奥三河の知人(ひと)より届く夏野菜 獣に勝ちて収穫(とられ)しものぞ

260、  丘上の松の翠の影深し声近づきぬツクツクボーシ

261、  蟋蟀のリンと凛々しく鳴く夜のトニーとマリアの恋物語

262、  花は白がくは紫実は青し臭木に潜みし精は水色

263、  「飼慣らせ」と寂聴尼僧は言い放つ心に棲みし孤独の虫を

264、  変哲のなき風景のいつのまにイルミネーションをちこちに見ゆ

265、  居ながらに刻々変わる富士の貌今日も覗いてご機嫌いかが?

266、  輝ける甍の波の静まりて退院の日の今日の小春日

267、  あかつきや曙の海しののめのほがらほがらに朝まだきなり

268、  よく見れば鶯もちに張り付けたシールのような目をしたメジロ

269、  ぬばたまの昼の美空にゆく雲やひと足早く春来るらん

270、  飼い猫に声を掛ければ先ず妻が返事を返す春遠からじ

271、  真っ青な空を背にして黒松の腕ふり揺れて春よ来い来い

272、  おうようで大胆なくせ臆病のギンが鼾をかいて寝ている

273、  爛満の花の下にて鯉たちの打ち重なりて歓喜の乱舞

274、  延命のカンフル剤となりにけり寒の戻りて花満ちにけり

275、  心臓の23億回打ちて未だに母を休ませざらぬ

276、  母逝きて高齢死なる診断書花丸三つ付けてやりましょ

277、  人ならず心が通う不可思議の通う心の有るぞ嬉しき

278、  眼を閉じて風の奏でる音を聴く武満徹のタクト振るのを

279、  ほろほろと枝垂れる萩の散り敷きて紫におう秋の夕暮れ

280、  書くことで濁りし水の澄みゆかむ峠(たお)を越えれば見初めらむ山

281、  勇壮に茶髪沸き立つ引き回し血潮燃やさむ若き獅子らは

282、  Meb上に数多の答ふパソコンのエラーで今日もまた助けらる

283、  酒という文字輝きて霜月の宵深まりし交差点角

284、  うす青の君の好しあさがをの花咲きし野に種摘みにゆく

285、  暗黒の宇宙(そら)に昇りて輝ける地球を星と思いしあの日

286、  見えざらんものに魅せられ我がままに己貫き星になりたり

287、  落葉の色づくままに散り降りて雨上がりの地に抽象絵画

288、  晴れたればまた時雨たる霜月の夕暮れの中木守り柿一つ

289、  殺人が日常となる必然の世に躊躇いのなきドラマあり

290、  冬枯れて八手の花の咲きにけりノロウィルスの姿にも似て

291、  星屑の中突き進む地球号 時速260万キロ

292、  北の地に義兄の住みて天気図にその生活の厳しさを見る

293、  初雪やみそぎの如く降りしきりしっかり生きよと頬を打ちたり

294、  餌台にエサ無きを見て雀らの落胆の声いと喧しき

295、  ヒバの枝打ち払われてキジバトの立ち尽くしたり朝のしじまに

296、  うばたまの寝しなに聞こゆチンの音サバの味噌煮を暖めいるらん

297、  雪雲の切れて差し込む朝焼けの地平を染めて春はすぐそこ

298、  小刻みに羽震わせて追い立てて気丈なメジロは独り占めせり

299、  きらめきの電磁波射してうらうらとラジオの音の弾む春の日

300、  嘘を食べ虚像ばかりを生み放つまことしやかな文明の箱

おまけ

301、ふじ色に朝の誉れの清らなりただ一日のけふの始まり

302、流れ来て流れ去りゆく必然に流されていく今日のはざまに

303、あんなにも遠く小さくなりてなお月は明るく吾を照らしいる


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