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きゅうゆう染めの技法
きゅうゆう染めの制作手順を簡単に説明します。
一点一点完全な手作業で、一針筒縫い締めていく技法は、技術と根気と力が必要です。
また染色するにも微妙な手加減と勘が必要になります。そのため絞り加工から染色まですべて自分でこなさなければならず、大量生産ができません。


 片野元彦先生が創始された絞り染めがベースになっています。

1、
 先ず何を表現するかを決める。それによって作品のサイズや布の種類が違ってくる。 おおまかなイメージとテーマに沿って素材を決める。

2、
 次に図案を考えます。生地の繊維の種類・打ち込みの数・組織・太さ・染着の良否などを考慮して図案を考えていきます。

 布を屏風畳みにして縫うため、布の厚さに最も制約を受けます。あまり厚いと染料が裏まで通らず、 畳んだ布の量が多すぎると針が通らない。
線の間隔も微妙な違いで雰囲気が変わってくるし、複雑な模様を表現するのはかなり難しい。

         

3、
 図案が出来たら配色を考える。何回で染め上げるかを決め、どの色からどういう手順で染めるかを決めておく。 この作業が最も重要で、作品の出来上が りのカギを握っている。

 順に重ねて染めるため、重ねた色のイメージが分っていないと思い通りの染め上がりにならない。 同系色の場合はいいがメリハリを付ける為には配 色に冒険も必要になってくる。

 明暗対比・色相対比・彩度対比・面積対比・同時対比・補色対比・寒暖対比をよく理解していないと、 いい配色の作品はできない。いつも配色には大いに神経を使う。

 絞り染めは一度製作に入ってしまうと、途中の状態が確認できない。想像しながらの作業はイメージがつかめていないと、 染める色のコントロールが難しい。

4、
 布に畳むための線を付けて加工の準備をしておくと同時に当て布を用意する。 当て布にも同じ線を引き、左右に対象の図案を写し取る。

 当て布の量は素材と染める布とのバランス、かつ縫い加工に無理がない様に加減する。少ないと染料が泣込むし、 多いと模様がボケてしまい上手く出ない。
試行錯誤を繰り返していくうちに最もいい分量が分かってきた。

 畳んだ生地に当て布を当て、左右がずれないように仮止めして白に残す部分から縫っていく。

          

5、
 木綿・麻・レーヨンの場合はスレン染料で染色する。スレンを使う理由は染着が早く、 微妙な色を何度も調整しながら染めるのに適しているため。
染着が早いのでムラになり易く、全体を同じ調子で染める為には手早く操作する必要がある。

 そのままでは畳んだ布の間に染料が入らず、液中で広げながら染める必要があります。これが中々大変で、 60度ほどの染液はゴム手袋だけでは熱いので、下に薄い木綿の手袋を重ねます。

 シルクの場合は酸性染料で染織します。この場合は特に温度をあげる必要が有り、 水を入れた容器に時々手を浸けながら染めないと熱くて作業になりません。

6、
 乾燥して最初に染めたところを残すため、二回目の縫いを施します。この時最初に染めた色の端切れをデーターとして残し、次に染めるときの下色のチェックに用います。
そうしておかないと外側からは中の色が見えず、作業の途中に既に染まっている色の確認ができません。

7、
 必要な回数(基本は3回)を染めたら、暫らく放置して糸を解き、ソーピングして完成します。

 方法が分ってもいいものが作れるという保障はない。その時々の条件(柄・布・色・気温・気分・イメージの質)等によって 様々に変化します。一度出来たからといって次も成功するとも限らない。
 データーがあっても決してその通りには染まらない。感覚的な部分が大きく、暫らく間が開くと感覚も鈍ってしまう。

 多くの失敗を重ね試行錯誤を繰り返すことで、今ではほぼ予想通りの作品に仕上げる事ができるようになった。

 絞り染めの魅力は、やはり不安と期待の中で糸を解くときの感動が醍醐味だと思っている。
他の染色法にはない偶然の力が、思いもよらない美しさを出して、時に喜ばせてくれることも魅力の一つです。

 自由で何をやってもいいというのは、手がかりが掴みにくくかえって難しい。
絞り染めのように制約があった方が入りやすく扱いやすい。目の前にいる敵と格闘する方が、 見えない敵と戦うより戦い易いという意味で。

        

『 守・破・離 』の心で事に当たれば、目的は必ず成就するものと思います。

  守=ひたすら学ぶ時期
  破=教えの言葉から抜け出し真意を会得する時期
  離=型に一切とらわれず自由に飛翔する境地

▲(守)学ぶ時期をひたすら繰り返して練習する。これを経ずして成功はない。 独創的で個性の豊かな芸術家も、初期にはひたすら写実的なデッサンを繰り返し、学んでいた。

 私の場合は、片野の絞りが先生に当ります。全く今までに無い技法で、 手がかりは作品集だけで、ただひたすら作品集と格闘する日々を送りました。

▲(破)真面目な取り組みは絶対必要だが、これに対し、逆に教えに囚われ、そこから抜け出せないのも進歩がない。 自分独自に工夫して、教えになかった方法を試してみる。 そして、うまくいけば、自分なりの発展を試みる。

 片野絞りにはない多色染めに挑戦し、そのために模様の線を明確に均一に出すことを独自の表現として研鑚を積んだ。

▲(離)さらに前進させ、自らの新しい独自の道を確立させる最終段階。
自己を常に発展させるべく修行、精進を重ねていく終わりのない道です。

 木綿・麻を中心に制作してきたが、シルクオーガンジーとの出会いで最高の表現の場を得て、自分の世界が確立したと自負しています。


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